<カンボジア雑記 5>カンボジアの子どもたち

いままで人物の写真を撮りたいと思ったことは一度もなかったのだが、カンボジアの子どもたちを見て撮ってみたくなった。
カメラを向けるとそれまでの無邪気な笑顔が、若干強張るのが残念だったけど、みんな可愛く、明るい笑顔を見せてくれた。

今回、「世界の風光」の「カンボジア」に掲載した子供たちは向こうで楽しい思い出をくれた子供たち。
「クロマー売りの少女」の二人組の女の子は、遺跡に向かう途中、「クロマーを買え!!」と言う前に、名前を聞いてきた。
ただ「お名前は?」でなく「お名前か?」と。名前を言っても覚えられないと思い、「名前は、あほ(あにアクセント)」と教え、帰りにクロマーを買う約束を して、
その場は別れた。帰り道、二人の少女は待ち構えていて、遠くのほうから「あほ、あほ、待ってた」と大声で叫ばれてとても恥ずかしい思いをした。
約束を果たすと、二人して「おぼえてる(忘れないよの意味)、あほ」と言われ、追い討ちをかけられ後悔。

二人目は「笛吹きの少年」。ある遺跡で砂の地面にとても上手な象の絵を描いている少年と、あまりうまくない花の絵を描いている少女がいた。
この二人はあそらく兄妹。像の絵のあまりの素晴らしさに、しばし立ち止まり鑑賞し、お礼に1ドル渡した。
それを見ていた妹が、自分の花の絵を見せて、「Give me 1$!!」とあまりにもせつない声で言われ、兄貴だけにあげて喧嘩になるのもまずいと思 い、
妹にも1ドル渡して、その場を離れた。しばらく歩くと前方から、元気に走ってくる少年がいて、すれ違いざまに「Give me Candy!」と言われた ので、
持っていたミルキーを二つ渡すと喜んで、先ほどの兄妹の方へ駈け出した。もう遺跡の出口に差し掛かろうとする頃、
ミルキーをあげた少年が、大声を張り上げ、手を振ってまたこちらに走ってくるのが見えた。その場で待っていると、到着するやいきなり、「Give me  1$!!」と言い放つ。
僕には、ただ1ドル渡したのではなく、素晴らしい絵を見せて貰ったお礼に渡したという想いがあったので、「NO!!」と言うと、
少年はポケットから笛を取出し、吹き始めた。1曲終えてまた「Give me 1$!!」こちらの胸の内を見透かされていた。


(あまり聞きたくもなかった)笛を聞かせてくれたお礼に(仕方なく)1ドルあげた。でもそれではこの笛吹き少年だけ、ミルキーをあげたことになるので、
ふたつあげたミルキーにもうひとつ追加して、「みんなでわけなよ」と言って別れたが、あの兄妹に」ミルキーをあげたかは不明!!

最後は、「クーレン山の少女」。クーレン山に到着すると、ガイドをお願いした人に30人ぐらいの子供たちが群がった。
何事かと思って見守っていると、ガイドさんが「1ドルで靴の見張り番を雇ってくれませんか?」と言う。靴の見張りの意味がわからなかったけど、
この先何が起こるのか興味津津でOKした。すると子供たちが3つのグループに分かれてジャンケン大会を始めた。負けた子供たちはその場から去るが、遅れて やって来た子供たちは途中からの参加が認められるルールらしい。30人以上のジャンケン大会なのに、あっという間に決着が着いたのを思い返せば、
日本のジャンケンとは違うのかもしれない。子供たちの表情を見ることに夢中になり、ジャンケンは見なかったのが残念。
そして見事このジャンケン大会で優勝した強運の持ち主が「クーレン山の少女」である。
涅槃仏を見る際に、靴を脱ぐ。その靴の見張りが彼女の役目だった。見学が終わり、靴を脱いだ場所に戻ると、ちゃんと揃えた靴のとなりに彼女がちょこんと 座っている姿にやられ、撮らせてもらった。

どのエピソードも文面では、したたかで計算高い子供たちに思えるかもしれないが、子供ながらに彼らも一生懸命に生きているわけで、子供たちと向き合うと邪 悪さを感じることなく、とても純粋で、気持ちいい子供たちだった。子供たちだけではなく、カンボジアの人々に触れ合うと『本当の幸せってなんだろう』とつくづく考えさせられる。

一ノ瀬泰造が『正直な人々、美しい国、僕が最も愛するカンボジア』と口癖のように言っていたらしい。約30年を経たいまでもそんなカンボジアに僕も触れ合う ことができて本当によい旅になったと思う。