【カンボジア旅雑記 1】 カンボジア旅行について

2009年4月28日〜5月4日

一ノ瀬泰造の足跡を少しでも辿ってみたい・・・。
一ノ瀬泰造とは、内戦時代のカンボジアに単独で潜入したカメラマンである。当時のカン ボジアは弾丸が飛び交う戦場。幾度も命の危険にさらされている。そのときの手紙や日記が1冊の本にまとめられており、またその本を原作として『地雷を踏ん だらサヨウナラ』という映画にもなった。
彼が命を賭けてでも見たい、もしくは、反政府軍クメール・ルージュに占領された『アンコール・ワット』を写真に収めたいと思った、その『アンコール・ワッ ト』を僕もこの目で見てみたい。
現在でもカンボジアには、内戦の傷跡のように地雷や不発弾がまだ多く埋まってはいる。その当時、アンコール・ワットは解放軍に占領され、その本拠地となっ ていた。
『地雷を踏んだらサヨウナラ』とは、彼が『アンコール・ワット』に潜入する決意を伝えた、友人への手紙に書かれた言葉である。きっと「死ぬ覚悟」があった のだろう。
事実、1973年11月22日、彼はアンコール・ワットに向かい、そのまま消息を絶ってしまった。
9年後、彼の両親により死亡が確認されることとなる。享年26歳。
当時、『アンコール・ワット』の写真は驚くほどの高値で売れるという状況下で、その功を求める虚栄心があったとは思う。しかし、純粋に『アンコール・ワッ ト』を自分自身の目で見たいという気持ちがあったのも紛れもない事実だと思う。
今、僕の中で答えを得ることができない2つの想いがある。
彼が生きた時代のカンボジアがもし平和であっても、彼は『アンコール・ワット』に惹き寄せられたであろうか。そして、人生の幕をおろす前に、『アンコー ル・ワット』を目に焼き付けることができたのであろうか。
映画における浅野忠信扮する一ノ瀬泰造は、『アンコール・ワット』を見上げるシーンで終わる。でもその部分はフィクションであり、事実は誰にもわからな い。
今回、カンボジアを旅するにあたって、一ノ瀬泰造の存在をできる限り強く意識してみたい。






僕自身の目と、いわば一ノ瀬泰造の目を持つことによって、旅の領域を超える何かが得られれば良いと思う。彼が『アンコール・ワット』に旅立った11月22 日(23日という説もあるが)は、僕の誕生日という偶然の一致に運命を感じながら。